【片恋パズル】3話2024年02月16日 22:00

〇マンション・501号室・リビング(夜)
鮎沢、鵜月原、一果、双葉の4人で人生ゲームをしている。
鮎沢、ルーレットを回す。
鮎沢「5か・・12345。お、就職する。20万円ゲット! やった!」
鮎沢、得意げに笑い、一果からおもちゃのお金をもらう。
鮎沢、双葉の笑顔に気付き、照れたように笑う。
一果「じゃあ、次は私~ ルーレットルーレット・・」
一果、ルーレットを回す。
双葉、全員が盤面に集中したのを見計らって、首の後ろに手を当て、目をギュッと瞑っている。
鵜月原、双葉の様子を横目で見ている。
一果「3! 123。え? 交通事故? 1回休みだって~」
一果、みんなの顔を見る。
全員、笑っている。
一果「じゃあ次はウッキーさんね」
鵜月原「あ~・・ちょっとデザート食べたくない? 双葉ちゃん、一緒に買いに行こう」
一果「え? 今? アイスなら冷蔵庫に入ってるよ」
鮎沢「そうだよ、ウッキー、終わってからでもいいじゃん」
鵜月原「ごめん。どうしても今ハーゲンダッツのクリスピーサンドが食べたくなって・・俺、ワガママだから」
鵜月原、立ち上がり
鵜月原「双葉ちゃん、財布取ってくるからちょっと待っててくれる?」
双葉、不思議そうな顔をして頷く。
X X X
鵜月原、部屋から出てくる。
バッグを持っている。
鵜月原「おまたせ。さ、双葉ちゃん行こうか」
双葉、頷き立ち上がるが、一瞬顔をしかめ立ち止まる。
鵜月原「大丈夫?」
双葉、頷き笑顔を見せ、鵜月原の後に付いて歩く。

〇同・502号室・玄関前(夜)
鵜月原、部屋の前で立ち止まる。
双葉、不思議そうな顔をして鵜月原を見る。
鵜月原「体調、よくないんでしょ? 横になったら?」
双葉、驚き、涙目になり、口を固く結ぶ。
鵜月原「大丈夫。あんなの遊びだから無理に付き合う必要ない。あいつらには適当に言っとくから。ね?」
鵜月原、双葉に笑顔を見せる。
鵜月原「あ、そうそう。もしよかったらこれ」
鵜月原、バッグから頭痛薬とカイロを取り出し、双葉に渡す。
鵜月原「普段飲んでる薬と違ったらごめんね。あと、体温めた方が楽になるかもしれないから」
双葉、頭痛薬とカイロを受け取り、お辞儀をする。
鵜月原「さ、早く入って。万が一あいつらに気付かれたら面倒だから」
双葉、頷いて鍵を開け、入っていく。
鵜月原「じゃ、また体調がいい時に遊ぼう。あ・・そうそう、これも。忘れないうちに」
鵜月原、鍵を渡す。
双葉「?」
鵜月原「うちの合鍵。パズルの続き、いつでもやりにきて。シンにも言ってあるから」
双葉、鍵を受け取り、扉の内側で頷き、ためらいがちに手を振る。
鵜月原、笑顔で頷き、手を振る。
鵜月原、エレベーターに向かって歩いていく。
双葉、鵜月原の後ろ姿を見つめる。

〇同・同・双葉の部屋(夜)
双葉、ベッドに横になって寝ている。
枕元には合鍵、カイロと頭痛薬は未開封のまま置かれている。
双葉、目を覚ましそれらを愛おしそうに触り、また目をつぶる。

〇同・501号室・リビング(夜)
鵜月原と女性が入ってくる。
女性はモデルのようなスタイルのいい女性。
活発そうで髪はミディアム。
アクセサリーを身に付け、ブランド物のバッグを持っている。
女性は鵜月原の婚約者、土師水琴(はじみこと・22)。
鵜月原「お待たせ~買ってきた。さ、食べよう」
鮎沢と一果、入ってきた二人を見て驚く。
一果「あれ? 双葉は? ていうかその方は・・」
鵜月原「双葉ちゃんは眠そうだったから家まで送ったよ。で、コンビニでアイス買って戻ってきたら、下で水琴に会ったから一緒に来た。水琴、お隣の一果ちゃん。一果ちゃん、水琴。僕の婚約者」
一果「え? 婚約者? あ・・初めまして。隣に住んでいる、相原一果です」
水琴、一果に握手をする。
水琴「よろしくね、一果ちゃん! なんてかわいいの!」
ハグをする。
鵜月原「あ、シンは前に会ったことあるよな?」
鮎沢「おお、水琴久しぶり!」
水琴「久しぶり~」
水琴、鮎沢にハイタッチする。
水琴「で? 何してたの? 人生ゲーム? 見てていい?」
鮎沢「もちろん。ていうか、双葉ちゃんの後そのままやれば?」
水琴「いい、いい。誰かの人生の後追いしたくないし。見てる」
鵜月原「まあ、とりあえずアイス食べようぜ。シン、一果ちゃんいる?」
鵜月原、アイスを二人に渡す。
鮎沢「あんがと」
一果「ありがとう」
全員、アイスを食べ始める。
水琴、ソファで鵜月原に腕を絡ませ、肩に頭を乗せながらアイスを食べている。
一果、二人を見ないようにしているが気になってチラチラ見ている。
鮎沢、一果の様子を見て笑っている。
水琴、アイスを食べるのを途中でやめ、鵜月原とキスをし始める。
その様子を見て驚く一果。
一果、鮎沢に目で訴えるが、鮎沢、「いつものこと」というような感じで頷く。
一果、気まずそうに立ち上がり、
一果「あ~ちょっとやらなきゃいけないこと思い出したかも・・双葉もいないし、今日は・・帰ろっかな。すみません。アイス、ごちそうさまでした!」
鵜月原「え? 一果ちゃん帰るの?」
鵜月原、立ち上がろうとするが水琴に押さえられる。
一果、出て行く。
鮎沢、一果を追うように出て行く。

〇同・同・玄関前外側(夜)
鮎沢と一果、立っている。
一果「びっくりした~刺激強すぎ。ちょっと鮎沢! 先に言ってよ」
鮎沢「ごめんごめん。言うタイミングなかったし。すげえよな。あの二人」
一果「『ここ日本だっけ?』って一瞬分からなくなった」
鮎沢「水琴はアメリカにずっと住んでたみたいだから、あれが普通らしいよ」
一果「そうなの? ウッキーさんといい、なんか鮎沢の周り、規格外なんですけど・・」
鮎沢「そう? でも人間だよ?」
一果「少なくとも私が働いてる工場にはいないタイプかも。ちょっとびっくりした」
鮎沢「でも二人ともすげえいい人だよ。きっと一果も好きになると思う」
一果「そうかな? でもどうしよう。私、双葉にウッキーさん薦めちゃった。婚約者いるなんて知らなかったし」
鮎沢「双葉ちゃん、別にウッキーのこと何とも思ってないだろ。気にしすぎじゃん?」
一果「そうかな・・ま、でもそれとなく双葉には言っとこうかな。ありがと。じゃあ・・またね」
鮎沢「おう。じゃ」
二人、それぞれの部屋に向かう。

〇同・502号室・一果の部屋(夜)
一果、鏡を見ながら化粧水をつけている。
X X X
(フラッシュ)
鵜月原と水琴のキス。
X X X
一果、鏡を見ながら唇に触れる。
X X X
(フラッシュ)
鮎沢とのキスを妄想。
X X X
一果、首を横に振る。
一果「いや、まだ付き合ってもないし」
一果、鏡を見つめる。
一果「でもウッキーさん、そっか。婚約者なんていたんだ・・」
X X X
(フラッシュ)
一果「双葉はウッキーさんどう?」
双葉、慌てて首を横に振る。顔が赤い。
X X X
一果「大丈夫だよね? 双葉・・」

〇同・同・リビング(翌朝)
一果と双葉、朝食を食べている。
一果、双葉の顔を見ている。
一果M「『あのね、双葉。私も昨日知ったんだけどウッキーさんには婚約者がいたの』よし、これでいくか・・」
一果「あのね、双葉・・」
双葉、思い出したように立ち上がり、自分の部屋に入る。
X X X
双葉、戻ってきて座り、合鍵を一果に見せる。
双葉、スマホを操作し画面を見せる。
双葉の画面『ウッキーさんから合鍵、もらったよ』
一果「え? 合鍵?」
双葉、頷く。
双葉、スマホを操作し画面を見せる。
双葉の画面『ウッキーさん、いつでもパズルしに来ていいよって。優しいね』
一果「あ、パズルね。びっくりした・・双葉、いつの間にかウッキーさんとそういう仲になってるのかと思った・・」
双葉、スマホを操作し画面を見せる。
双葉の画面『ウッキーさんとは何でもないよ。これでいつでも鮎沢君と会えるね』
双葉、いたずらそうな顔をして笑う。
一果、顔を赤くして笑う。

〇食品工場・食堂
一果と双葉、美保と真理子が昼食を食べている。
一果「美保さん、真理子さん、なんと合鍵ゲットしました!」
美保「え? どういうこと? いつの間にそんな仲に?」
一果「まあ、なんていうか、やっぱり私たちの魅力にやられたんでしょうかね・・」
双葉、スマホを操作し画面を見せる。
双葉の画面『部屋にやりかけのパズルがあるので、いつでもやっていいよ、ってことらしいです』
美保と真理子「なあんだ」
美保「でもでも、信用されてなければ鍵なんて渡されないもんね。なんかドキドキする~」
一果「ですよね! もしかしたら本当に付き合っちゃうかも!」

〇マンション・502号室・リビング(夜)
インターホンが鳴る。
モニターには鮎沢の姿。
一果、モニターを確認し
一果「鮎沢?」
鮎沢の声「あ~一果? ちょっと俺とデートしてほしいんだけど」
双葉、驚いた顔で一果を見る。
一果と双葉、抱き合って飛び跳ねる。

〇同・501号室・鮎沢の部屋(夜)
一果「彼女のフリ!?」
鮎沢、ベッドの上に服を並べている。
一果、不機嫌そうな顔で見ている。
鮎沢「おう。悪い、ちょっと事情があって。デートに見えそうな服、どれだと思う?」
一果「それ、デートしたことのない人間に聞く? そもそもなんでそんなことになったわけ?」

〇回想・大学・構内
鮎沢、歩いている。
前方に元カノの花音(20)。
花柄のワンピース。巻き髪でかわいらしい感じの女性。
鮎沢、顔をしかめ立ち止まるが、花音が駆け寄る。
花音「鮎沢君。待ってたの。考えてくれた?」
鮎沢「だから、ヨリは戻さないって。そもそも花音から『別れて』って言ったろ」
花音「あれは・・鮎沢君の気を引きたかったの。『花音が 好きだから別れたくない』って言って欲しかった。だって鮎沢君、一度も花音のこと『好き』って言ってくれなかったじゃない。お願い。気に入らないところあるなら、直すから」
鮎沢「そういう人の気持ちを試すようなことするなよ。そもそも好きじゃなかったら付き合わないし。それに俺、もう彼女いるから」
花音「嘘! 信じない。私ずっと見てたから知ってるもん。デートとかしてないじゃん」
鮎沢「本当。同じマンションに住んでるからデートも部屋なの」
花音「じゃあ、名前教えてよ。彼女の名前」
鮎沢「・・一果」
花音「・・」
鮎沢「・・もういいだろ。待ち伏せとかもうするな」
花音「・・待って。会わせて。その子に会って確かめたら、本当に諦めるから」

〇マンション・501号室・鮎沢の部屋(夜)
一果「呆れた~ 人を勝手に巻き込まないでよ」
鮎沢、一果を拝むように手を合わせる。
鮎沢「悪い! どうしても他に頼める人いなくてさ。必ずお礼はするから!」
一果「当然! あ、餃子はお礼にならないからね!」
鮎沢「え? そうなの?」
一果「やっぱり! あそこの餃子で済ませようとしてたでしょ。鮎沢の考えてることなんてバレバレなんだから!」
鮎沢「あ! そうだ! 呼び方ちょっと変えてくれる? 『鮎沢』だとほら、またなんか突っ込まれそうだからさ。『シン』とか『シンくん』とか・・」
一果「やだ、恥ずかしい」
鮎沢「は? 俺の名前が恥ずかしいって言うのか。(一果の首に手を回しプロレス技のような動きをする)オラ。呼べ、早く」
一果「もう~そうじゃなくって、呼び方変えるってなんか照れるんだよ~」

〇カラオケ店・室内(日替わり)
一果と鮎沢、手をつなぎ、二人でぎこちない笑顔を浮かべている。
花音、不機嫌そうな顔で一果の顔をじっと見ている。
花音「あんたが鮎沢君の彼女なんて許せない。私の方がかわいいじゃん」
一果「はぁ? 鏡見た方がいいんじゃない? 性格の悪さが化粧で隠しきれてませんが?」
花音「ちょっと鮎沢君! なにこの女!」
鮎沢「だから彼女だって。俺の彼女悪く言うなよ」
鮎沢、つないだ手を花音に見せるように上げる。
花音「じゃあいつから付き合ってるの?」
鮎沢「1か月くらい・・だよな?」
鮎沢、一果を見る。
一果、頷く。
花音「・・私、この女見たことある。餃子一緒に食べてたでしょ。しかも2人じゃなかったし。ただの友達じゃん。付き合ったばかりの彼女と餃子なんて食べにいかないもん」
鮎沢「え? なに? こわ。お前ほんとそういうのやめた方がいいぞ」
花音「・・わかってる。けど、自分でも止められないの。無視されてるって分かっててもメッセージ送るのやめられない。鮎沢君が何してるか、気になって仕方ないの」
鮎沢「・・いつかお前の良さを分かってくれる奴いると思う。とにかく、俺は無理だ。ごめん」
花音「・・わかった。じゃあーー」
鮎沢「じゃあ、いいな、帰るぞ」
鮎沢、立ち上がるが、花音、鮎沢を押して座らせる。
鮎沢「(驚いた顔で)え?」
花音「じゃあ、二人が恋人同士っていうの、見せてよ。ここでキスして」
鮎沢「は?」
一果M「え? 何? 聞いてないし。嘘でしょ? するの? しちゃうの?」
一果、鮎沢と花音の顔を見比べている。
花音「ホントに恋人ならできるでしょ」
鮎沢「できるけど、なんで他人に見せる必要があるんだよ」
花音「お願い。私のこと、ちゃんと振って。それとも、友達だから、できない?」
鮎沢「・・分かった。一果、目つぶって」
一果M「嘘・・私の初めてのキスなんですが・・人前で?」
一果、首を横に振る。
一果「ちょ、ちょっとこんな頭おかしい子の言うこと聞くの? 鮎沢?」
花音「ほら、やっぱできないんじゃん。『鮎沢?』だって。何それ。本当に付き合ってるならそんな呼び方しないでしょ?」
一果「い・・いいじゃん! 色んなカップルいるでしょ。あ~分かった。ほら、鮎沢、いつもの感じで」
一果、目をつぶる。
鮎沢「わかった」
鮎沢、キスをする。
花音、しばらく見ているが、バッグを手に持ち、
花音「分かった! もういい! じゃあね。お幸せに!」
花音、怒りながら出て行く。
X X X
鮎沢と一果、恐る恐る体を動かす。
鮎沢、ドアを開けて花音がいないことを確認する。
鮎沢「よかった~ もう大丈夫」
一果「ごめ~ん」
鮎沢「あの『鮎沢?』のくだり、マジ焦ったわ」
一果「ごめん! ホントにごめん! ついいつもの呼び方になっちゃった」
鮎沢「いやでもホント助かった。もう大丈夫だと思う。怖かったわ~」
一果、鮎沢を見つめる。
鮎沢「ん?」
一果「・・」
鮎沢「え? 俺、キスしてないよ? ちゃんと指挟んだし」
X X X
(フラッシュ)
鮎沢、キスの直前、一果の唇に自分の親指を置き、指にキスをする。
X X X
鮎沢、『何もしていない』とでも 言うように両手を上げている。
鮎沢「え? なんか、怒ってる?」
一果、鮎沢の両頬を手で挟み、キスをする。
呆然とする鮎沢。
一果、照れながら出て行く。
鮎沢「え? あの、これって・・ え? どういう・・」

〇食品工場・食堂(日替わり)
一果と双葉、真理子と美保が昼食を食べている。
真理子と美保「え~~~!? 自分からしちゃったの?」
一果「はい・・なんか自分でもよく分からないんですけど、キスされるって思って覚悟してたら指挟まれて何もなかったことにしようとされて、ちょっと頭に来たっていうか、意地悪したくなったっていうか・・あ~もうよくわかんないです。なんであんなことしちゃったんだろ」
美保「で。それが一果ちゃんの初めての・・」
一果、照れながら唇を触る。
一果「・・はい」
真理子と美保「きゃ~~~!!!」
真理子「おばちゃん、すっごい今楽しい! いいわ~青春だわ~」
美保「ホントホント! で? その後どうしたの? 付き合うことになったわけ?」
一果「それが・・恥ずかしすぎて出て来ちゃって。戻るのもなんかおかしいし、そのまま帰ってきちゃいました」
美保「は? で、彼からは連絡あったの?」
一果「いえ・・でも隣だし、すぐ会えるから・・」
美保「は~??? 何やってるの。こういうのは時間が経てば経つほどなかったことにされていくものよ」
一果「え? そうなんですか?」
真理子「はい、じゃあ今晩行きなさい。オムライスかカレーか豚の生姜焼き持って」

〇マンション・501号室・キッチン(夜)
一果、オムライスを作っている。
鮎沢、入ってくる。
鮎沢「あ~ごめん、ちょっとバイト長引いちゃって」
一果「家庭教師だっけ?」
鮎沢「そうそう。で、ごめん。今日生徒の家で飯食っちゃった」
一果「あ、そうなんだ? じゃあ、明日にでも食べてよ。冷蔵庫入れとくから」
鮎沢「サンキュ」
鮎沢M「こないだのキスは、どういうこと?」
一果M「こないだのキス、どう思ってる?」
鮎沢「あ・・こないだはありがとな・・彼女のフリ、してくれて」
一果「あ~、いいのいいの! あれから大丈夫?」
鮎沢「お~ 今日は待ち伏せなかったわ。ありがと。一果のおかげ」
一果「よかった~」
鮎沢「あ、そうだ。お礼! 何がいい? なんでもしますよ。一果様」
一果「じゃあ、遊園地とか? 一緒に行ってくれない?」
鮎沢「もちろん。2人で?」
一果M「遊園地誘うってことは、デートしたいからでしょ? 分かるでしょ。2人でしょ。でもわざわざ聞くってことは・・」
一果「あ~ 双葉と・・3人?」
鮎沢M「なんだ、2人でデートしようってことかと思った。じゃあこないだのキスはなんだ? 俺のこと好きだと勘違いするところだった・・ヤバいヤバい・・で? 双葉ちゃんと3人? わからん。正解がわからん。ウッキー!!!」
鮎沢「あ~それならウッキーも誘おっか」
一果「いいね! じゃあ4人で! ウッキーさんて確か火曜日と水曜日休みだったよね? シフト合う日があるかな・・ちょっと待って・・」
一果、スマホを操作する。
一果「あ・・ちょうど今度の火曜日お休みだ。どう? ウッキーさんに聞いといてよ」
鮎沢「分かった。聞いとくよ」
一果「じゃあ、よろしくね。今日は帰る」
鮎沢「おう」
一果、出て行く。
鮎沢、ほっとしたように長く息をつく。

〇同・502号室・リビング(夜)
一果、ソファでぐったりしている。
双葉、一果にスマホを見せる。
双葉の画面『どうだった? 鮎沢君と付き合うことになった?』
一果、疲れた顔で起き上がり、首を横に振る。
一果「言えないよ~ 自分からなんて。鮎沢の気持ち全然分かんないし。ね~双葉~今度のお休み付き合って。一緒に遊園地行ってよ~」
双葉、不思議そうな顔で頷く。

〇同・501号室・リビング(夜)
鮎沢、ジグソーパズルと格闘している。
鵜月原、入ってくる。
鵜月原「ただいま~」
鮎沢、立ち上がる。
鮎沢「お~ウッキー、おかえり。冷蔵庫にオムライスあるよ」
鵜月原「へ~ 一果ちゃん、また来たのか。マメだね~」
鮎沢「ウッキー、ちょっと相談があるんだけど・・」
鵜月原「え? 何? 珍しいね」
X X X
鮎沢と鵜月原、ソファに座っている。
鵜月原、オムライスを食べている。
鵜月原「うん。旨い!」
鮎沢「でね、ウッキー。そっからが謎なの。俺、さっきも言ったけど、こうやって親指を一果の唇に置いてキスしたわけ。で、それを見て本当にキスしたと思った花音が出てったの。それで終わりじゃん? で、二人で良かったね~ じゃあ、帰ろっかってなった時に、一果が突然俺にキスして出てったの」
鵜月原「ふ~ん。やるじゃん、一果ちゃん」
鮎沢「俺、だから一生懸命考えて、一果は俺のこと好きなのか? と思ったわけ。で、俺から『付き合おうか?』と言うべきなのかどうなのか悶々と考えていてさ。そしたら一果が今日飯作りに来てくれるって言うから、そのことを話し合ういい機会かな~と思ってたら、2人じゃなくて双葉ちゃんも入れて遊びたいって。なんだそれ? お前、俺が好きなんじゃないのか? って謎が深まったわけ」
鵜月原「確かに謎だな。え? 一果ちゃんから遊園地に行きたいって言ったんだよな?」
鮎沢「そう。だから2人でデートだと思うじゃん。普通。そしたら『双葉も一緒に』とか言うわけ」
鵜月原「・・シンの説明だと全然分からん・・」
鮎沢「そう。だからウッキー、今度の火曜日空けといて。一緒に遊園地行こうぜ」
鵜月原「だからなんでそうなる・・」
鮎沢「いいだろ。俺には全然一果の気持ちが分からないんだよ。ウッキー、お願いだから一緒にいって確かめてくれよ」
鵜月原「まあいいけど。シンは双葉ちゃんが好きなんじゃなかったのか?」
鮎沢「だから~あれは友達としてもっとコミュニケーション取りたいって話じゃん」
鵜月原「そうなんだ? 俺、てっきり双葉ちゃんのことが好きなんだと思ってたよ。まあいいけど。で? シンは一果ちゃんがシンのこと好きなら付き合ってもいいって思ってるのか?」
鮎沢「うん、まあ。一緒に買い物行ったり、飯食ったりするの全然気を遣わなくて楽だし、話してて楽しいしさ。まあ付き合うってそんな感じだろ」
鵜月原「まあ、シンがそれでいいならいいんだけど」

〇食品工場・食堂
一果と双葉、真理子と美保が昼食を食べている。
一果「ダメでした・・やっぱり自分から『付き合って』なんて言えない・・」
美保「あらあ・・一果ちゃんたら。かわいい」
一果「だって普通、『遊園地行きたい』って言ったらイコール『デート』ですよね? それなのに『2人で?』なんて聞きます? あ~もうダメ。脈ゼロ。全然私と付き合う気ないと思う」
美保「だってあの中学生唐揚げ君彼氏でしょ? 何にも考えてなかったのかもよ? そもそも一果ちゃんだって彼に気持ち伝えてないわけでしょ? だったら分かんないじゃない。彼だって戸惑ってるかもしれないし」
真理子「そうそう。こっちが思ってる以上に鈍感だから。ちゃんと伝えないと分かんないのよ。うちだっていまだに旦那に『食器洗った後のスポンジはちゃんとギュッと絞ってね』って言い続けてるもの。こっちがイラっとして空気で伝えようとしても全然! 全く伝わらないの。言葉で伝えるしかないのよ」
一果「え~ でも、やっぱ。ほら、分かります? 空気読んでほしいって言うか、察してほしいって言うか、向こうから『好きだから付き合って』って言ってもらいたいじゃないですか」
美保「分かる! 分かりすぎるほど、分かる。でも唐揚げ君にはそれは無理なの。一果ちゃんが彼を変えていくしかないのよ! 頑張れ! 遊園地デート応援してる! 頑張って二人きりになって、その時にちゃんと言うのよ。『付き合って』って。分かった?」
一果、しぶしぶ頷く。

〇マンション・502号室・玄関前(朝)
一果と双葉、玄関の鍵を閉めている。
水琴の声「じゃあ、遊園地楽しんできてね~」
一果と双葉、声の方を見る。
501号室のドアが開き、水琴が出てくる。
水琴の後ろには鵜月原が見える。
水琴、振り向き鵜月原とキスをしている。
双葉、その光景から目を離せず固まっている。

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